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無痛分娩でないお産は有痛分娩?

2016.01.26役に立つ?情報

無痛分娩に関するご質問あり、以下のようにお答えしました。
一般的な内容で、私の基本的な考えをお伝えする文章ですので、一部改編してSACRAブログにも掲載します。

以下本文

分娩のための痛み、陣痛に対する対応は、国柄で大きく異なります。
たとえばアメリカはほぼ全例で無痛分娩です。これはアメリカ人の合理主義と大きく関連すると思われます。男性にはなくて、女性のみに陣痛の苦しみが与えられるのは不合理だから、人類の科学技術の進歩による硬膜外麻酔を利用して、その痛みをキャンセルしてお産に臨む。これは、とてもアメリカ的だと思います。
私の留学先は英国でしたが、英国で無痛分娩を選択されるのは半数程度です。去年お産されたキャサリン妃は無痛分娩でしたが、全体ではほぼ半数のかたは日本と同じ、痛みを乗り越えてのお産を選択されます。
ヨーロッパでもオランダは、少し毛色が変わっていて、マリファナが合法であったり安楽死が認められています。オランダではいまだに自宅分娩も結構多いと留学中に聞きました。

翻って日本ですが、「産みの苦しみ」を良い言葉として使います。「輝かしい成果は、それ過程の努力があるからこそなお光り輝く」というメンタリティーを、日本人は持っています。ラグビーワールドカップで、強豪南アフリカを撃破したのは、エディー・ジョーンズのもとで苦しい練習に明け暮れたから強くなった・・といったストーリーを、私を含めて日本人は好みます。
また、日本人の骨盤は西洋人に比べると狭く、全例に無痛分娩を行うと、適切な「いきみ」が生じないため、難産が増えると言われています。
その2点のために、日本で無痛分娩が一般化しないと考えられます。

では、無痛分娩でないお産は苦しみだけなのでしょうか?
じつは、痛みを乗り越える自然の力があります。脳内モルヒネ、脳内麻薬あるいはエンドルフィンといった多幸感をもたらす生体内物質が、分娩中の母体の脳で多量に分泌されていることが知られています。陣痛は当然痛いですが、ずっと痛いわけではなく、痛くなっては引いていきます。
私の妻の話では、間欠期は後ろに引きこまれるように気持ちよくなって眠くなり、また痛みの山が来て、そしてまた引いていく・・・。それが陣痛だとのことです。これはエンドルフィンが脳内に充満している状態と考えられます。そして頑張って頑張って、最後に赤ちゃんがうまれると陣痛の痛みが消えます。そのとき母体は、脳内にエンドルフィンが充満した、非常にハッピーな状態で赤ちゃんとの最初の出会いを果たすことになります。これが母児のつながりをがっちりと強固なものにすると考えられています。つまり、自然な分娩は、無痛分娩の反対の有痛分娩ではなく、自然の痛みを乗り越えるメカニズムを発動させるお産です。

神様は陣痛の痛みを残されました。これはおそらく分娩の進行に必要だからです。
しかしその痛みを乗り越える仕組みも、神様はちゃんと体の中に作ってくれています。


アメリカ風の合理主義で、痛みをキャンセルしてお産に臨むのもまた一つの方法です。それを御希望なら、当院では対応できません。
SACRAでは、助産師がたくさんいますので、それぞれのやり方で、上記の痛みを乗り越えるメカニズムの発動をサポートします。もしそのようなお産を選択されるなら、喜んで当院での管理をお引き受けします。

お大事になさってください。

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